核酸治療薬(2022年9月24日現在)

  • トフェルセン、Tofersen

作用:スーパーオキシドジスムターゼ 1(SOD1)に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)によりSOD1の発現を抑制する。

対象はSOD1変異*を持った家族性ALS 

過去の治験結果:主要評価項目である6ヵ月後のALSFRS-R(症状の進行速度)に対して有効性は見いだせなかった。(p=0.97)

今後延長試験で非急速進行性型における進行速度の緩徐化等の検証を行う。

詳細

過去の治験結果:第三相試験:主要解析群(急速進行性群)(偽薬21例、実薬 n=39例)のALSFRS-Rでのトータルスコアの28週(二重盲検期)でのベースラインからの変化量という主要有効性評価項目で有用性を認めなかった(群間差1.2; p=0.97)。神経系の重篤な有害事象(脊髄炎、髄膜炎、腰椎椎間板症、頭蓋内圧亢進および乳頭浮腫)が約7%に発生した。偽薬投与群は発生0。(Miller et al., 2022)

一方、副次的および探索的評価項目(運動機能、呼吸機能、生活の質)でトフェルセンに有利な傾向が観察された。トフェルセン投与により、神経細胞障害の示す髄液NLFの有意な低下をしめした。[急速進行性群で実薬群60%減少、偽薬群20%上昇]

オープンラベル継続投与試験(12か月後)では、初期偽薬群と比較して初期実薬群は、ALSFRを3.5点(95% [CI]: 0.4, 6.7)、肺活量9.2%(95% CI: 1.7, 16.6)高かった

ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03070119

投与法:月1回髄注

副作用:腰椎穿刺に関連した有害事象(頭痛、腰痛など)に加え、脊髄炎を含む重篤な神経学的事象がトフェルセン投与群にみられた。

治験の現状:2022年7月26日FDAはtofersenの新薬承認申請の審査に合意した。この申請は、第3相試験において、実薬群では、神経フィラメント軽鎖NfL値(神経細胞損傷のマーカー)の低下が大きかったことに基づいたものである。審査は 1月25日までに決定する予定。

SOD1遺伝子変異を有する発症前の方にトフェルセンの投与を開始することで臨床的症状の発現を遅らせることができるかどうかを検証する臨床第III相ATLAS試験が開始。

ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04856982 

参加者募集中 本邦あり

終了予定: 2027年8月備考:急速進行性型のSOD1遺伝子変異を持っているがまだ症状のない家族性ALS患者が対象。

  • アデノ随伴ウイルスAdeno-associated virus rh10 containing an anti-SOD1 microRNA (AAV-miR-SOD1)

作用:SOD1に対するmicroRNA組み込みこんだアデノ随伴ウイルスを、脳脊髄に感染させSOD1の発現を抑制する。

治験結果:1例報告 SOD1変異A5V#をもつ急速進行性型症例に投与された。(Mueller et al., 2020)

投与後、AAVに関連する髄膜炎に対してステロイド治療を要した。

治療開始15.6カ月、発症後20カ月で呼吸不全にて死亡。

投与法:髄注1回

病理学的には、脊髄SOD1蛋白の90%低下が確認できたが、生命予後の改善には至らなかった。

備考:非急速進行性型一例((D91A–D91A変異)への投与を行っている。

作用:日本では2番目に多い家族性ALSの遺伝子FUSに対すASOでその発現を抑制する

治験結果:1例報告 FUS変異 P525L#患者(25歳)

治療開始時既にすでに呼吸不全がありNTTV*使用。治療開始後ALSFRSの低下は緩徐にみられたが、呼吸不全、嚥下障害が進行、治療開始後約1年、発症後18カ月で合併症により死亡。(Korobeynikov et al., 2022) 

(#FUS変異 P525Lは、呼吸不全まで発症後平均13.8カ月である。(Zhou et al., 2020))

投与法:髄注(10カ月で12回投与)

備考:病理学的には、脊髄でのFUS蛋白の異常蓄積は劇的に減少していたが、臨床症状の改善は認めていない。

現状:第3相試験 ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04768972

参加者募集中 本邦情報なし

終了予定:2024年3月

  • BIIB078, Afinersen

作用:C9orf72 変異*を持つALSに対してASOでその発現を抑制する

治験結果:1例報告 治療開始後、バイオマーカーであるC9orf72 変異から発現する異常蛋白質の脳脊髄液で低下を確認したが、神経障害を示すNLFはむしろ増加。ALSFRS-R(症状の進行)は横ばい。

投与法:髄注(17カ月で8回投与)

治験結果:Biogen 第1相試験BIIB078では、安全性は確認されたが、臨床的有用性(ALSFRS-R, %VC等)は認めず、開発中止となった。

ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03626012 

  • WVE-004

作用:C9orf72 変異*を持つALSに対してASOでその発現を抑制する。上記と同様な薬理作用

現状:Wave Life Sciences 第1相試験 (NCT04931862) 

治験結果:バイオマーカーであるC9orf72 変異から発現する異常蛋白質(polyGP)の低下を脳脊髄液で確認。

ClinicalTrials.gov Identifier: NCT04931862 

参加者募集中 本邦情報なし

終了予定:2023年2月

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。