(詳細:医療従事者向け内容、*用語集参照)
- リルゾール(リルテック®)経口薬 Riluzole
作用:神経の過剰な興奮を抑えることにより、神経細胞保護作用を有する薬剤。
過去の治験結果:これまでの二重盲検比較試験(n=1477例)の結果から生存期間を2-3か月延長させる効果が示されている。
副作用:比較的頻度の高いものとして,嘔気,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状,眠気,無力感,めまい。
検査結果では肝機能障害,貧血などが報告されている。
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作用:グルタミン酸による興奮毒性を抑え、神経細胞保護作用を有する薬剤。げっ歯類のモデルマウスでは有効性を示したエビデンスは乏しい(Hogg et al., 2018)。
過去の治験結果:4つの二重盲検比較試験(n=1477例)のメタアナリシスの結果から生存期間(死亡や気管切開までの期間)を2-3か月延長させる。(Miller et al., 2012)
一方、努力性肺活量(%FVC)が 60% 以下の患者では効果が期待できない。
投与法:1回1錠、1日2回(朝及び夕食前)、リルゾールとして1日量100mgを経口投与。食前投与の理由:空腹時に比して高脂肪食後は本剤の吸収率が低下するため。
備考:最も科学的根拠の高い治療法である。日本、米国、欧州で認可されている唯一の薬剤。
- エダラボン(ラジカット®)点滴静注製剤 Edaravone
作用:活性酸素除去
過去の治験結果: 発症2年以内の軽症例では6か月の治療でALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R*: The revised ALS Functional Rating Scale、ALSFRS-R)の低下(進行のスピード)を2.49点抑えた。しかし罹病期間が3年以内の症例では有効性をみとめていない。
ドイツでの長期間の観察(約1年)では、リルゾール投与下においては、ALSFRS-R低下(症状の進行速度)、生存期間(死亡や気管切開までの期間)を延長する効果はみとめなかった。
現状:経口薬の第3相試験
備考:1年以上の治療で、進行抑制、生存期間を延長する効果は認められないため、欧州では認可されていない。
2021年12月10日にエダラボン経口懸濁剤(飲み薬)の2週間ごと投与は点滴静注製剤の安全性プロファイルとおおむね一致と報道。米国食品医薬品局(FDA)による RADICAVA ORS®(エダラボン経口懸濁剤)を承認(2022年5月12日)
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作用:活性酸素除去。げっ歯類のモデルマウスでは有効性を示したエビデンスはある。(Ito et al., 2008)
ALS重症度分類*1度又は2度,努力性肺活量が80%以上及び罹病期間が2年以内の対象(実薬68、偽薬66例)において、6クール(6か月)の治療で群間差は、ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R*: The revised ALS Functional Rating Scale、ALSFRS-R)2.49点[0.99,3.98、p値=0.0013]と有意差を認めた。(Writing-Group-Edaravone-ALS-Study-Group, 2017)
しかし罹病期間が2-3年の症例まで含めた治験(実薬100、偽薬99例)では有意差を認めていない。(Abe et al., 2014)
ドイツでの多施設共同,傾向スコアマッチ法による長期間コホート研究[実薬(エダラボン+リルゾール群)130例(観察期間中間値12.7か月)、偽薬(エダラボン単独群)133例(11.1 か月)]では、ALSFRS-R低下速度(病気の進行)、生存期間(死亡や気管切開までの期間)いずれもリルゾール治療下での追加効果は示せなかった。(Witzel et al., 2022)
一方、米国による同様な解析(実薬318例、偽薬318例、両群とも65.4%がリルゾール治療歴あり)では、エダラボンにより6か月の延命効果を認めた。(Mitsubishi Tanabe Pharma America, 2022)
投与法:1回2袋(エダラボンとして60mg)を,60分かけて1日1回点滴静注を行う。通常、本剤投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとし、これを繰り返す。第1クールは14日間連日投与する(入院が必要)。その後14日間休薬し、第2クール以降は続く14日間のうち10日間投与後14日間休薬を繰り返す。
副作用:腎障害0.3%以下、肝機能障害(0.24%)
1年以上の治療で、進行抑制、生存期間を延長する効果は認められないため、欧州では認可されていない。
2021年12月10日にエダラボン経口懸濁剤(飲み薬)の2週間ごと投与は点滴静注製剤の安全性プロファイルとおおむね一致と報道。2022年3月14日に、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に製造販売承認申請。
米国食品医薬品局(FDA)による RADICAVA ORS®(エダラボン経口懸濁剤)のを承認。(2022年5月12日)
治験の現状:エダラボン経口懸濁剤(MT-1186)のALSを対象とした長期安全性および忍容性を評価するグローバル第3相臨床試験
ClinicalTrials.gov Identifier: NCT05151471
リクルート終了 本邦あり
終了予定: 2024年6月
備考:エダラボン飲み薬の”1日1回毎日投与”の有効性を確認する日本を含めたグローバル試験である。点滴から経口薬になることにより侵襲性が下がりかつ連日投与が可能となる。
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