<筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)とは>
はじめに
ALSはアルツハイマー病、パーキンソン病に次いで患者数の多い神経変性疾患であり、日本では約9,000人の患者さんがいます。全世界のALSの有病率は、人口10万人あたり4.42人とされています。(Xu et al., 2020) 発症は40代から70代の方が多く、90%の方は家族歴なく発症します。一方、10%の症例は家族性であります。日本ではSOD1変異を持つ家族性ALSの頻度が高く、ALS全体の2-3%となります。
この病気を発症すると、徐々に身体が動かせなくなり、食事や会話も困難になり、呼吸もできなくなってしまいます。人工呼吸器を装着すれば生命維持が可能ですが、全身の麻痺は進行します。人工呼吸器による延命は平均7年とされています。(Hayashi et al., 2020)
残念ながら人工呼吸器装着までの期間を数ケ月程度遅らせる薬はあるものの根治療法はありません。障害(変性)が生じるのは運動神経のみであり、患者さんは意識がはっきりしたまま徐々に体が動かせなくなります。また、24時間あらゆる生活介護が必要となるため介護負担が非常に大きいのも特徴です。
現在、世界中の研究者により根本治療を目指して多くの治療研究がなされています。
本サイトでは、科学的根拠に基づいた最新のALS治験情報を提供いたします#。
慶應義塾大学医学部メモリーセンター
伊東大介
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協力
慶應義塾大学医学部神経内科
西本祥仁
岡田健佑
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1)信頼のおける前臨床研究がある
2)原則第2相以上
3)社会的、医学的重要性が高い
最終更新日
2022年4月17日
<ALSの体内で起きていること>
ALSでは脳から脊髄までの上位運動神経と、脊髄から筋肉までの下位運動神経の両方が変性し、2次的に筋肉がやせ衰えます。ALSの90%以上の例では、TDP-43と呼ばれるたんぱく質が、脳、脊髄の神経細胞に異常蓄積しています。
一方、家族性のALSで最も多いSOD1変異を持つALSの患者様は、TDP-43の異常蓄積がなく、代わりにSOD1が異常蓄積します。したがって、病気の根源は異なると考えられています。
治療
現在本邦で認可されている薬は2つあります、いずれも病気の進行を抑える作用はありますが、その効果は限定的です。残念ながら根本的に本疾患を治せる薬はまだありません。
リルゾール(リルテック®)
エダラボン(ラジカット®)

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