1) ALS機能評価スケール改訂版(ALSFRS-R: The revised ALS Functional Rating Scale)
ALS患者さんの日常生活を評価尺度。治験では最も重要視される尺度。
しゃべる、嚥下、身の回りの動作、歩行などの12項目(0~4の5段階)で構成され、その合計点(0(最重症)~48(正常))で評価する。 20%以上の差が示されると治療効果に意義があるといわれている(Castrillo-Viguera et al., 2010)
ALSFRS-R
1.言語
4 | 正常 |
3 | 軽度の言語障害 |
2 | 繰り返すと理解できる |
1 | 言語以外の伝達方法を併用 |
0 | 言葉にならない |
2.唾液
4 | 正常 |
3 | 口に唾液がたまり夜間に漏れる |
2 | 中程度に唾液が多く少し漏れる |
1 | 明らかに唾液が多く,漏れる |
0 | 絶えずティッシュ紙やハンカチをあてる |
3.嚥下
4 | 何でも飲み込める |
3 | 時々むせる |
2 | 食事内容の工夫を要する |
1 | 経管栄養が補助的に必要 |
0 | 全面的に非経口栄養 |
4.書字
4 | 正常 |
3 | 遅く拙劣だが判読できる |
2 | 判読できない文字がある |
1 | ペンを握れても書けない |
0 | ペンを握れない |
5.胃瘻ありかなしかのどちらか選択 (胃瘻なし)食事用具の使い方
4 | 正常 |
3 | 少し遅く拙劣でも介助不要 |
2 | フォーク・スプーンは使えるが,箸は使えない |
1 | 食物は誰かに切ってもらはなければならないが,何とかフォークまたはスプーンで食べることができる |
0 | 全面介助 |
5.胃瘻ありかなしかのどちらか選択 (胃瘻あり)指先の動作
4 | 正常 |
3 | ぎこちないがすべての指先の作業ができる |
2 | ボタンやファスナーを留めるのにある程度手助けが必要 |
1 | 身の回りの動作に手助けが必要 |
0 | 全く指先の動作ができない |
6.着衣と身の回りの動作
4 | 障害なく正常に着る |
3 | 努力を要するが遅くても完全自立 |
2 | 時々介助あるいは工夫を要する |
1 | 介助が必要 |
0 | 全面介助 |
7.病床での動作
4 | 障害なくできる |
3 | 努力を要し,遅いが自立 |
2 | 独りで寝返ったり,寝具を整えられるが非常に苦労する |
1 | 寝返りを始めることはできるが,独りで寝返りをうったり,寝具を整えることができない |
0 | 自分ではどうすることもできない |
8.歩行
4 | 正常 |
3 | やや歩行が困難 |
2 | 補助歩行 |
1 | 歩行不能 |
0 | 意図した下肢の動きができない |
9.階段をのぼる
4 | 正常 |
3 | 遅い |
2 | 軽度に不安定,疲れやすい |
1 | 介助を要する |
0 | のぼれない |
10.呼吸困難
4 | ない |
3 | 歩行時にでる |
2 | 食事,入浴,身支度のひとつ以上ででる |
1 | 座位あるいは臥床安静時にでる |
0 | 呼吸器が必要 |
11.起坐呼吸
4 | ない |
3 | 息切れのため夜間の睡眠がやや困難 |
2 | 眠るのに支えとする枕が必要 |
1 | 座位でなければ睡眠できない |
0 | 睡眠できない |
12.呼吸不全
4 | ない |
3 | 間歇的にBiPAPを使用する |
2 | 夜間はBiPAPを継続する |
1 | 夜間,昼間ともBiPAPを継続する |
0 | 気管挿入または気管切開で呼吸器装着 |
2) NPPV (Noninvasive Positive Pressure Ventilation:非侵襲的陽圧換気)
呼吸状態の悪い患者さんに対して行う人工呼吸管理法の1つ。気管切開することなくマスクを介して換気を行う。
3) 筋萎縮性側索硬化症の重症度分類
重症度1度:家事・就労についてもおおむね可能。
重症度2度:家事・就労は困難だが、日常生活(身の回りのこと)はおおむね自立。
重症度3度:自力で食事、排泄、移動のいずれか1つ以上ができず、日常生活に介助を要する。
重症度4度:呼吸困難・痰の喀出困難あるいは嚥下障害がある。
重症度5度:気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養等)、人工呼吸器使用。
4) SOD1遺伝子
日本では最も多い家族性ALSの原因遺伝子。ALS全体の2-3%。変異が遺伝子上のどこの場所にあるか、により症状の進行速度がある程度予想できる。急速進行性型は、発症後2-3年以内に呼吸不全をきたす。(例: A5V変異)
非急速進行性型は、進行が穏やで歩行困難に至るまで発症後10年近くかかるものもある。(例、H46R変異)
5) 小胞体ストレス
細胞内の小胞体という小器官で正常に折りたたまれなかった(変性)タンパク質が蓄積することによって引き起こされる現象
6) C9orf72遺伝子
欧米で最も多い家族性ALSの原因遺伝子であるが、本邦ではその変異がみられることはまれである。
7) Pooled Resource Open-Access ALS Clinical Trials (PRO-ACT) データベース
これまでの23の第2相および第3相臨床試験に参加した11000人の患者データーが収められている。研究者「はこのデータベースに無料でアクセスでき利用できる。特に、偽薬治療群のデーターは、非盲検治療試験の対照群として利用される。https://ncri1.partners.org/ProACT
8) Japanese Consortium for Amyotrophic Lateral Sclerosis Research (JaCALS)
ALSの病態を明らか、将来の治療法開発へつながる成果を生み出すことを目指した本邦の研究組織。ALS患者さんの臨床情報および遺伝子情報を収集。https://www.jacals.jp/
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